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BORO展

BORO展

浅草 アミューズミュージアム
http://www.amusemuseum.com/index.html

民俗学者・田中忠三郎による青森の山村、農村、漁村で使われてきた“ぼろ”と呼ばれる衣服や布類のコレクション。

人の一生はおろか、二代、三代、時には四代にわたって、繕い継ぎ充てを繰り返された布たち。
素材感、色彩、デザインの美しさから今、
アート・テキスタイルデザインの分野で高く評価され、多方欧米のコレクターから買い求められているらしい。
どこかアール・ブリュット的な着目のされ方と似た感覚を覚える。
しかし時にしろ物体にしろ集積の持つ魅力は
何も今初めて語られるものでもない。

すべての仕事に意味がある。
その一層一層に
綺麗ごとではない厳しい生の営みが寄り添っている。
ものがなく貧しく、汚らしくみすぼらしかった。
それで人々はみな
純粋で清涼でやさしかった。

この展示が真に語るのは用の美ではなく
むしろそこに潜む人々の
何代にもわたって継がれてきた営みのやさしさだと訴えているようだった。

Mononiha_coverカタログとともに田中忠三郎の一生を綴った書籍

「物には心がある」田中忠三郎/アミューズエディテイメント 

を購入した。
物についてのエッセイというより
民族学者としての観点で書かれたぬくもりのある本だ。

例えば青森の冬は厳しい。
来客があるとまず「あだれ、あだれ」と囲炉裏にあたらせ汁物を与える。
暖をとらせ落ち着くと「で、どこぞの誰か?」「何の用事か?」と聞き出すのが普通だった話。

夜はドンジャ(ボロを重ねた厚厚の夜着)1枚に
家族全員が裸になってひっつきあい温めあって眠った事
ゆえに日中諍いがあっても夜は許しあったのだという話

またこんな話。
娘が妊娠する。父親は誰だと問われる。
それが妻子ある男などとの間違いによる場合、娘は当然答えない。
すると娘の父親は
「相手もいないのに娘の腹が大きくなるわけがねえ、これは根精様の仕業だな」と男性シンボルがまつられた祠へでかけ
「今度娘にいたずらしたらただじゃおかねえぞ」
とシンボル様に縄をかけて締め上げ懲らしめ、一件落着となる話。
娘が決定的に傷つかないよう逃げ場をあたえるのだそうだ。
それで生まれた子供は自分の末の子として育て、娘は普通に嫁にやる。周囲も知っててあえて言いたてない。

田中忠三郎はこう言っている。
人は弱い存在だ。
してはいけないとわかっていても、フラフラとやってしまう。
その愚かさを昔の人は
愚かなまでのやさしさで許してやるのだと。

現代にそのまま移行できるものでもないが
比べれば色々余裕がない。

甘やかしでないやさしさ、相手を思いやることについて考えた一日だった。

なお、ボロ展は常設展。

展示物はすべて触れます。
明らかに固くて重そうなボロたちに触れると
驚くほどやわらかで暖かく
あたたかな空気が一層包みこまれているかのよう。

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コメント

興味深いですな。
特に根精様のくだり。

かつての村のあり方や情愛がどんなであったか考えさせられます。

「忘れられた日本人」(宮本常一著)は読んだことある?読んでなかったらぜひ。

投稿: 蔵田マサル | 2010-03-09 21:23

お~、
こんなに多くのことを語りたかったのね。
バルビレッジでは確かにうまく伝えられないね。

浅草だけど、ちょっくら行ってこようと思う。

投稿: とりこ | 2010-03-10 00:07

マサルさん

どれ早速読んでみよう。

根精様の他に「盆踊りに団扇を持つ理由」も同じ類のアレです。

偶然氏と握手をかわしたが
どことなくのんびりととぼけていらっしゃる印象。
この人なら誰でも警戒心すら持つことなく、
口を開いてするすると語ってしまうにちがいない。
ムツゴロウ氏を丸裸にしたようなひととなり。
民俗学者たるもの皆かくあらん

投稿: Mika Furusawa | 2010-03-10 04:44

とりこさん

浅草をよき地へと変えてください。

実用的な面でいえば
足袋の繕い方や
ものをとことん使い尽くす法を
具体的にみれた感じです。

投稿: Mika Furusawa | 2010-03-10 04:56

「すべての仕事に意味がある〜訴えているようだった」なんて美しい文章だろう!

投稿: 厨子王丸 | 2010-03-24 14:35

コメントありがとうございます

私は何にしても必要以上にこねくりまわしがちですが
今回は素直に口をついて出てきた感情です。そんな展示にこれからもたくさん出合いたいものです。

投稿: Mika Furusawa | 2010-03-25 09:02

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